大相撲ウォッチング
２００２／１／２９
千秋楽から２日が経つ。結局千秋楽までもつれ込んだ優勝争いは、本割り・決定戦で栃東が２連勝するという劇的な幕切れとなった。個人的には、怪我の後も快進撃を続ける千代大海の相撲内容には半信半疑の気持ちを拭えなかったので、「最後に実力通りの結果が出た」というのが率直な印象だ。初優勝となった栃東としては、付け人頭・大日岳（元十両）の今場所限りでの引退が決まっていたこともあり、その意味ではさぞ感慨深かったことだろう。
一方、関脇で１２勝を挙げた琴光喜の大関昇進は見送られた。この判断自体には異論はないが、「１４日目の武雄山戦の負け方が悪い」という理由付けには疑問を感じる。成績・相撲内容についての判断はあくまでも１５日間を総合的に捉えて行われるべきもので、終盤戦の印象を過剰に重視することは不公平を招く危険がある。今場所の琴光喜の場合、３場所前は平幕・先場所は一桁勝ち星という点から見て、もとより昇進には１３勝が必要条件だったと言うべきであり、場所中から「期待を煽る」報道が繰り返されたのは問題があったと思う。
２００２／１／２５
１３日目。優勝を争う３人は、琴光喜が土佐ノ海、千代大海が武双山をそれぞれ退けた一方、栃東は魁皇に一方的に敗れて２敗となってしまった。これで、千代大海が他の２人を抑えて単独トップである。しかし残りの対戦相手から見て、まだ琴光喜・栃東のいずれにも逆転可能性は十分残されているのではないか。明日・明後日の相撲で、千代大海の海鵬戦でのケガの後遺症が出るか出ないかが、優勝の行方を決めるカギと言えよう。
また今日は、幕下で春日王の優勝が決まった。彼はもともと韓国相撲（シルム）の王者であり、入門後も幕下まではすんなり出世してきたが、そこで壁に当たって苦しむ状況が続いていた。しかし今場所の相撲を見ると、ようやく関取としても通用する力が身に付きつつあるように感じられる。ちょうど今年は日韓ワールドカップ共同開催の年でもあり、春日王には来場所以降も活躍を期待したいものだ。
２００２／１／２０
中日。千代大海・栃東・琴光喜の３人は依然全勝を守り、特に千代大海の鼻息はいやが上にも荒い。しかし客観的に見ると、千代大海は彼にとっての難敵である魁皇・栃東・武双山の３力士とまだ対戦しておらず、これといった明確な苦手の少ない栃東・琴光喜と比較すると、一概に有利な条件にあるとは言えないだろう。千代大海が優勝する条件があるとすれば、先の３力士との対戦を２勝１敗で乗り切った場合ではなかろうか。
ところで、相撲そのものと同程度に気になるのが場所後の理事選である。その中でも出羽海一門は、結局候補者調整を行うことが出来ず、北の湖・出羽海（鷲羽山）・武蔵川（三重ノ海）の３人が立候補することになった。もしこの結果共倒れが起こった場合には、北の湖親方の理事長就任には赤信号がともることになろう。そのため一門としては、北の湖・出羽海の２人に集中して票を回すことが予想されるが、それが成功するか否かは予断を許さない。当日まで目を離せない状況が続きそうだ。（なお私としては、北の湖・二子山のいずれによっても相撲協会の根本的改革は不可能だろうと考えているが、二者択一で言えば、二子山の方が「閉ざされた相撲協会」という傾向をより助長するのでは・・・と危惧する）
２００２／１／１６
４日目。今日から武蔵丸が休場することになった。左腕が全く使えない以上、やむを得ない決断と言うしかない。ただ武蔵丸としては、場所前の横審の稽古総見を欠席しながらプロレス観戦していたことについて内舘牧子氏から非難されていたので、今回「結果を示せなかった」ことは大いに心残りだろう。私には、内舘氏の議論はいかにも形式主義的・精神主義的なものに思える。同氏は果たして、４場所連続で休場中の貴乃花に対するのと同じ基準で武蔵丸を批判しているのだろうか？
一方、目立つのは大関の千代大海と栃東、あるいは琴光喜、貴ノ浪といった力士の元気さである。今場所は全般的に、好調な力士と不調な力士との差が著しいように感じられる。その意味では、横綱が休場している割に面白い場所になりそうだ。
２００２／１／９
初場所の開幕を前に、元ＮＨＫ解説者・緒方昇氏（元関脇・北の洋）の訃報が伝えられた。私の年代だと、同氏については武隈親方として、そしてテレビ解説者としての「人の良いおじいさん」的な姿がまず思い浮かんでしまうのだが、現役時代の姿を見るとなかなかに精悍な力士であったようである。また同氏の功績として忘れてならないのは、春日野理事長の片腕として長年協会運営の中枢を支え、両国国技館の無借金建設を実現したことだろう。ご冥福を祈りたい。
ところで、先日恒例の横審による「稽古総見」が行われたが、両横綱と大関・魁皇は欠席（しかも、貴乃花については休場が濃厚らしい）とのことで、何やら今場所も始まる前から暗雲が漂っている感じである。魁皇の腰は大丈夫なのであろうか。最近は２桁勝ち星と休場を交互に繰り返しており、今場所は「休場」に当たるパターンになっているだけに、大いに気になるところだ。